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2008年3月15日 (土曜日)

Tattoo

25歳前後の頃だったと思う。当時、僕は風呂のないアパートに住んでいた。住所は「元菊町」。風呂に入るため、歩くには少し遠いのだが、「六枚町」にあった銭湯に通っていた。その銭湯でのお話。

その日、僕が入り口から男湯の脱衣所に入っていくと、そこには数人の服を着ている人たちがいる。みんな今から帰ろうとしている。浴場の中は曇ってよく見えないが10人前後入っているようだ。いつものように小銭を番台においてから、服を脱ぎ始めた。番台の人は何も言わない。この頃、僕は浴場に眼鏡をかけて入らなかった。僕は当時から近眼の度はかなり進んでいて、眼鏡をかけないと、本当に周りが見えなかった。

中は静かだ。まあ、いつもそんなに話し声は聞こえない。ただ、入っていくと、ぼんやり見える人たちの背中にどうも青っぽい色がついている。近眼でも「色」はわかる。近づいたとき、それが刺青だとわかった。そして周りを見渡すと、こちらに背中を向けている人の背中は全員青っぽい。背中が見えない人も、腕等が青っぽくない人は一人もいなかった。

僕はとっさに「帰ろう」と考えた。だが次に考えたのは、入ってすぐ出るのはいかにも「そこにいる人たちが嫌だ」と態度で示すことになり、逆にそのことに因縁をつけられるかもしれないということだ。そして0.5秒間悩んだ末、何食わぬ顔で「かけ湯」をしてお湯につかった。まさか殺しはしないだろう ……

頭を洗っている間の目をつぶっている時間が恐怖だ。タオルに石鹸をつけて背中を洗うときに石鹸が隣にかからないように細心の注意を払った。そして、さも、普通のような感じで、いつもは40分くらいの長湯なのに20分で切り上げた。頭の中にずっとあったのは、その銭湯がある「六枚町」には交番があるということだ。裸ででも全力で走ればその交番まで逃げられないか、だけど僕は運動オンチで走るのも他人より遅いから無理だろうか、等々 …… 。

銭湯には「刺青、泥酔、お断り」の紙が貼ってあった。番台のオッサン、「お断り」どころか、僕以外全員刺青じゃないか。恐くて断れなかったのかもしれないが、せめて入ってくる人間に小声で教えるぐらいしても良かったんじゃない?

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