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2008年5月 1日 (木曜日)

「さくら」という言葉

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小学校の低学年の頃だったろうか。お祭りに出かけた。通りに屋台が並んでいる。持っていた小遣いはいくらぐらいだったろうか。「たこ焼き」が6個で10円だったと思う。

主婦10人くらいが取り囲んでいる一角があった。「てきや」というのかな。威勢の良いお兄さんが「調理器具」の実演販売をしている。「これは、おろし金にもなるし、きゅうりの薄切りもできるし、細工切り(?)もできる万能調理器だよ~」

実演が終わると、見ていた主婦が一斉に「買うわ」「私も」「私も」……。というか、見ているうちから、しきりに感嘆の声があがっていた。母親思い(?)の僕は、「これがあればお母さんも楽になる」と本気で思った。小学校の低学年だ。信じて疑わない。買いたい「たこ焼き」も「お面」も「おもちゃ」も買わずに、持っていたお小遣いのほぼ全額を使ってこれを買った。母親の喜ぶ顔が見たくて ……

家に帰って母親にこれを差し出すと、反応は予想したものとは違っていた。「何て馬鹿なものを買うの?」。母親は母親で、子供には自分の欲しいたこ焼きなんかを買ってほしかったのだろう。小さな子供はまずそうするのが普通だ。そして、それでも「ありがとう」と言って、買ったときの様子を聞いてくれた。そして、周りの主婦が我も我もと買ったという話に、「ああ、それは「さくら」と言うのよ」。

僕はこうして、「さくら」という言葉を覚えた。憎しみの対象としてだ。あの場で「買わされた」のは何人で「さくら」が何人かなんてわからない。とにかく、そういう「人をだます悪いやつ」なんて許せないと思った。もちろん、正確に言えばだましてなんかいない。単にその場の雰囲気を盛り上げるためのものなのだが、幼心には「悪」だった。そんなことは無いと思うが、もしかしたら春に咲く「桜」よりも先に、この「さくら」を覚えたかもしれない。

   

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