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2008年6月22日 (日曜日)

プライバシー公開アパート①

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学生時代に金沢市「幸町」に住んでいた僕は、社会人になってしばらくして「元菊町」に移り住んだ。6畳2間でトイレ共同、洗濯機共同、風呂無し。昔はそんなアパートも多かったが、そのアパートは、アパートとして造られたものではなく、古い工場の2階をアパートにしたもので、かなり変わっていた。 まず、ドアが2枚のすりガラスの引き戸になっていて、明かりが点いているかどうかはもちろん、うっすらと人の動きさえわかる。3部屋あったが、隣との壁は薄いなんてもんじゃなく、普通の会話がそのまま聞こえる。テレビをつけていると、隣の部屋のテレビの違う番組の音が重なるので聞きづらいことこの上ない。そんなアパートを選んだ理由は、職場に近かったこともあるが、なんと言っても「家賃が安かった」からだ。

僕の部屋に前に住んでいたのは、僕の友人の女性だった。その女性がやはり僕の友人と結婚することになり、部屋を出るというので僕が入ることにした。そんなアパートに女性が住めたのは、隣に住んでいた人が静かなおばあちゃんだったからだ。隣が男だったら、すりガラスドアの部屋に独身女性は住まないだろう。そういうわけで部屋は綺麗だった。彼女が出て行ってから1週間くらいで僕が入った。現在の管理アパートのように入居者が出たあとのメンテナンスなんかまったく無い。

引越し当日、応援してくれた友人数人が帰ってから、僕は部屋の整理に取り掛かった。まず、押入れの中に布団を入れようとしたのだが、この押入れが、「奥行き」は通常より浅いのだが、「幅」は畳の長いほう2畳分という大きさで、収納は十分だったのだが、棚が3段になっていたこともあったのだろう、気づかなかったのか、一番上の棚に彼女の荷物が「忘れ物」として残っていた。 それは数冊の「ノート」だった。

こんなとき、ノートを開いて中を見るというのは「自然な行為」だろう。大事な中身なら連絡しなくちゃならない。免許証や財布を拾った人も、警察に届ける前にちょっとは開いてみるだろう。そんなわけで中を見てみると、それは「筆談ノート」だった。隣との壁が薄いから、友人が遊びに来たとき、隣のおばあちゃんに聞かれたくない話をするのに、会話を「筆談」でしていたものだ。そのアパートだから必要だったものと言えるのだが、最初の数ページを読んで、「友人」としての自覚で、僕はそれ以降読むのをやめた。中はすべて結婚相手との「会話」であり、見た目はきわめて「おとなしくて清楚な」彼女の書くものとは思えない大胆な内容が書かれていたからだ。

これは弱った。 ある意味、彼女には「大事なノート」だと思うのだが、相手に連絡して「中を読んだか?」と聞かれた場合、「読んでない」と言ってもおそらく信用しないだろう。まして嘘が下手な僕はすぐばれる。そして「絶対に誰にも見られたくないもの」を見てしまった相手には、おそらくあまり良い感情は持たないだろう。男なら、「いやぁ、読まれたか、ハハハハ」と笑って済ませる人間もいるだろうが、女性はそうはいかない。 悩んだ末、「見なかった」ことにして、ゴミ箱に捨て、彼女には連絡しなかった。その後何回か彼女とその御主人に会ったが、特に聞かれもしなかったから、二人は「忘れ物」には気づかなかったのだろう。

     

     

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