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2008年9月 9日 (火曜日)

店長の友人

Hoooottt27118

若い頃、ある職場の同僚と昼食をずっと共にしていた時期がある。もちろん外食だ。職場の近くで「食堂」のようなものは5店ぐらいで、それらの店の中から「今日はここで食べよう」と選択していた。

近くにさほど高級でもないホテルがあり、そこのレストランの昼食メニューが好きで、よく利用した。そして、僕らが通い始めた頃の店長が僕らと同年代で、何がきっかけだったかは忘れたが、僕ら二人を「友人」ということにしてしまった。僕は特に彼に友情を感じてはいなかったが、相手から「友達」と言われてそれを否定するのも勇気がいる。別にかまわないだろうと思って、そのままにしていた。

ところが、困ったことが起こり始めた。僕ら二人が席につくと、「友人」である彼がすぐに同席するのだ。そしてそれだけならよいが、僕は必ずライスは大盛りなのだが、彼がウエイトレスに「大盛りの追加料金なんか伝票につけるんじゃねえぞ」と言う。彼は「友人である僕のためのサービス」のつもりなのだ。

僕もサービス業に従事していた経験がある。その職場のトップの人間にもいろいろいるが、まず、忙しいときは、周りの者への指示も的確であるばかりでなく、自らも先頭に立って動かねばならない。ふんぞり返っている者が上司では、その職場はうまくいかない。そして「指示する」「注意する」ことと「威張る」こととは違う。僕の経験では、威張る者ほど能力が無い。これは間違い無い。

さて、そこのレストランの店長は、昼食時の12時過ぎというお客様が集中する時間帯で、他の従業員が走り回っているときに、僕らの席に来て一緒に昼食をとり始めるのだ。僕が「良いのか?」と尋ねると、「気にするな」と言う。そして食後のコーヒーや煙草もゆっくりと味わう。そして、従業員がミスすると手招きし、他のテーブルのお客様のことも考え、一応小声ではあるが、叱りつける。その言い方は「指導」ではない。極めてぞんざいな口調での「非難」「批判」でしかない。自分のやっていることは棚に上げて、「この忙しいときに何をやっているんだ!」と言う。僕が従業員なら「お前こそ働いたらどうだ」と言いたくなるところだ。

彼はおそらく他の従業員全員から嫌われていただろう。それは見ていてわかる。そして僕らは、その従業員たちから見れば、「嫌いな店長の友人」であり、「友人の立場を利用して大盛り料金を払わない人間」に成下ってしまったのだ。これはまずいと思い、大盛りを頼まないようにしようとしても、すっかり顔を覚えられていて、断っても大盛りになる。店長がいない日でも、「大盛りにしないと後で叱られます」となる。そして、じゃあ払うと言うのだが受け取ってくれない。本当に行き辛くなってしまった。

数ヵ月後に彼はいなくなった。理由は知らないし、聞こうともしなかった。新しい店長は、僕らが入っていくと、「大変申し訳ありませんが、本日以降、ライスの大盛りは100円増しになりますので、ご了解ください」と言ってきた。そこで「だから払うと言ったじゃないか」とは言わなかった。事実、今まで払わなかったのだ。新しい店長や他の従業員に僕らが「普通の人間」と思われるために、僕らはその後もそのレストランに通った。『前の店長がいなくなって大盛りが100円増しになったら来なくなった客』ということにはなりたくなかった。

      

       

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